書道の可能性を拓き、未来を彩る「彩irodori書家 美蓮さん」

人図鑑

彩irodori書家 美蓮さん

事業内容
さくら教室主宰・書写書道教育専科(いろ)()会会長・彩アートカンパニーラボ代表
筆文字デザイン業・書道パフォーマンス・その他書道講師業

プロフィール
行田生まれ行田育ち。高校・短大も自宅から通う。小学2年から書道を始め、中学で師範免許を取得。高校は書道部で活動・短大では国文科を専攻し書道を選択。短大卒業後は、一般事務職に就き、結婚して22歳の時に第一子誕生。育児に専念する生活を送る中、27歳で書道教室を自宅で開き、教授免許を取得。30歳の時にMOJIデザイン専科コースを修了。2015年に書道パフォーマンスを初披露し、その後も筆文字デザインや書道講師業でも活躍の場を広げる。2024年2月に市民公益活動団体「彩アートカンパニーラボ」を立ち上げる。

——書道は幼少期に始められたのですか?

小学校2年の時に近所のお習字教室に通い始めて、そこから中学3年まで続けました。高校は部活でやっていて、短大では国文科を専攻して書道を選択科目で選びました。中学までやっていたのは、いわゆるお習字で、正しく美しい字を習うというものです。高校生以上は、ちょっと芸術が入ってくるので、書道っていう括りに変わっていきます。高校の書道部では展覧会に出展していて、賞もいただきました。

——その頃から、将来は書道の道へというお気持がありましたか?

そこまで将来には結びついてなかったですけど、中学の時に師範免許をいただいたので、いずれおばあちゃんになった時に教室ができたらいいなっていうのは、ざっくりありました。

——書道教室を始められたきっかけは?

27歳の頃、長男が幼稚園の時にママ友の上のお子さんが小学2年で、近いところに書道教室がないよねっていう話をしていたんです。すごい大変そうに探していたので、大丈夫!できるよ!みたいな感じで、最初は生徒さん2人から「さくら教室」をスタートしました。書道は学生時代のこととして一度終わっていたので、そこが再開のきっかけですね。その頃、普通にパートもしていたので、パートの傍らで教室を週1回で始めました。

——書道教室を始めて、生活が変わりましたか?

お子さんたちの学校が終わってからの教室なので、どうしても時間帯が夕方になってしまうため、子供がまだ小さかったので心配もありましたけど、母に助けてもらい、その時間だけ子供の面倒をお願いしました。自宅の和室を教室にしたので、主人に理解をしてもらったのもありがたかったですね。教室を始めて、私自身も一緒にまた勉強していきたいなという気持ちでした。

——そこから生徒さんが増えていったのですか?

自分も勉強するつもりだったので、特に募集はしていなかったのですが、ありがたいことに、友達から友達へ…という感じで、いつの間にか増えていってくれました。子供の教室は基本的に週1回で、月3回ほど通って来ています。うちはコースをたくさん設けていて、もっと頑張りたいっていう子は、月の4週目は何回来てもOKという環境を作っています。生徒さんは、下は5歳からご年配のかたまで、結構幅が広いです。子供の教室は夕方からなのですが、昼間に大人だけの時間もあります。

——字が上手になるコツってありますか?

大人に関してなんですけど、生徒さんに聞いてみると、通信の講座をやって断念したというかたが多いんです。通信の何が難しいかというと、どこを直したらいいかをその場で直接聞けないという点だと思います。多分、自分の癖があっても自分では分からない。でも、私が見たら一発で分かります。大人は教材のお手本を見て書いたら、それなりに書けると思うんですよ。私の場合、自分の名前や住所は、まずはお手本なしで書いてもらって、その自ら出てくる文字の癖を矯正していきます。最終的にはお手本を見ながら書いたりもするんですけど、最初の段階で癖を矯正するのが大事かなと思いますね。みなさんお名前は1回で絶対上手になります!大人の教室では、普通のペンでも筆ペンでもお習字でも、何をやってもいいので、各々のやりたい用具を持ってきてもらっています。

子供の場合は、ちゃんとお手本を見て、しっかり綺麗な形をまずは覚えるのがやっぱり大事だと思います。頭にインプットするために、美しい字を見て書く。大人と子供の入り口は違いますね。

——「美蓮」というお名前に込められた想いは?

「美」は、自分の本名の一文字を入れました。「蓮」は、 行田に生まれ育ったというのもあり、行田の蓮。蓮って自立している花なんですよね。泥の中から出て来て、あんなに綺麗な花を咲かせるっていう魅力を感じていて、蓮という字を入れたいと思って「美蓮」にしました。27歳で、また書道をやろうと思った時につけた名前です。

——文字を書くお仕事は、お教室の他にどんなものがありますか?

例えば日本酒やコーヒー豆の販売に使われるラベルのロゴを書いたり、命名書などがありますね。命名書は一般的なものじゃなくて、デザイン命名書という感じです。ファミリー書という家族の名前をハート型に書くおしゃれなものもあります。あとは、ポスターなどの題字を頼まれることもありますよ。

——どのように依頼がくるのですか?

基本的に人の繋がりで、ということが多くて内々に頼まれる感じですね。うちわやトートバッグにその場で好きな文字を書きますよというのを「ライブ書」と呼んでいるんですけど、単発的にイベントに出店してやったりもしています。

本当はね、ちゃんとホームページ等でお仕事依頼を受け付けたらいいと思うんですけど、私がそういうの凄く苦手で…。だから、もし事務的なことをやってくれる人がいたら、本当にありがたいなって思うんですけどね。でも今までは何とか自分のペースでやっています。

——思い出に残っていることや、ご自身の転機となった機会はありますか?

書道教室の生徒さんが、日本一になりたいって一緒に頑張って受賞できた時の嬉しさは忘れられないです。あとは、自分が書いた文字をロゴにした商品が、棚に並んでいるのを見た時はすごく嬉しいし、全部思い出に残っていますね。

2015年に書道パフォーマンスを生まれて初めてやったんです。床の上の大きい紙に書いたんですけど、楽しい!!という感覚でした。そして、そのパフォーマンスを観てくれていた方々からの反応もすごく嬉しかったのを覚えています。その後も、教室の発表会等で書道パフォーマンスを披露したりしますが、生徒さんの保護者などが感激してくれるんです。本当に生徒さんの若いパパが感動して泣いちゃいましたなんて言ってくれて、そういう何かを与えられているのかなと思うと、とても嬉しいし、やりがいを感じますね。

——書道パフォーマンスはかなりの回数をやってこられたのですか?

そうでもないんです。2015年に初披露して以来、お教室の発表会でやったりはしていましたけど、その後コロナ禍になってしまって、なかなかパフォーマンスをする機会も少なかったのですが、去年4月に彩キッズパフォーマンス書道部っていう子供たちのパフォーマンス書道部を作ったんですね。それをきっかけに色々なイベントに私も出ることになりました。

——書道パフォーマンスへのこだわりはありますか?

私が1人でやるものは、かっこいい書道をお見せしたいので、テンポ感も早く、かっこいい系の曲を使います。先日はAdoさんの曲でパフォーマンスしました。特にジャンルは決めていませんが、子供に流行っている曲を教えてもらって、聞いていてビビッ!ときたものを選んだりもしています。その曲を聞き込んで、本番までイメージトレーニングをしていきます。

——キッズのパフォーマンスは美蓮さんがプロデュースを?

後々は自分達自身でやれるようになって欲しいですが、小学生がほとんどなので、今は私が指導しています。でも、今年の5・6年メンバーはダンスを習っている子が多かったので、パフォーマンスの中にダンスも取り入れて、振り付けを生徒さんに任せました。

書道パフォーマンスって高校生からというイメージがあって、高校生になったらやりたいって言う子が結構いたんです。だったら高校生まで待ってないで、今やったらいいじゃん!というノリでキッズの部を作っちゃいました。色んな子に入ってほしいです。今回は未経験の小学1年生の子も4人いて、大きい筆で書くのが初めての子もいましたよ。次回も公募しようと思っています。生徒さんから、私も刺激や気づきをたくさんもらっています。

——書道パフォーマンスって社会的にも広がってきていますよね?

高校生たちのパフォーマンスが、結構凄いんです。文化祭でやったり、書道パフォーマンス甲子園という全国大会もあります。近日、静岡県で行われる大会に審査員として行ってくる予定で、予選の映像を見せてもらったんですけど、本当にひとつの物語のような凄い作品ばかりでした。年々レベルが上がっている気がします。書道も表現の仕方が進化していると思いますね。

——今年の2月に彩アートカンパニーラボという組織を立ち上げたそうですが?

書道って敷居が高いとか地味そうみたいなイメージがあると思うので、もっと色んな切り口を作って、書道を身近に感じてもらえたらという想いで活動している市民公益活動団体です。主に動いているメンバーは私を含めて3人で、もともとは書道教室の生徒のお母さん2人に、私がぜひ一緒にやってほしい!と声をかけさせてもらいました。各々自分のお仕事があり、家庭のことや子育てもしながら本当に大変だと思うんですけど、この活動に賛同して動いてくれていて、とてもありがたく頼りにしています。

——具体的にどんな活動を?

今年の2月に組織を立ち上げて、3月に百花繚乱という書道のイベント、夏は浮城まつりへのライブ書の出店・書道パフォーマンスの披露・だんべ踊り連参加など、その後も切れ間なく各種イベントに参加してきました。

それも今年の11月に行われた「爛漫~イロトリドリノセカイ~」というイベントの告知のためでもあったんです。このイベントは行田市市制施行75周年記念事業でもあり、私たちが今まで主催してきたイベントの中でも最大のものでした。オープニングでは、今までに見たことがないものをやってみたいという私の希望で、吹奏楽と和太鼓と書道のコラボレーションパフォーマンスを披露したんです。市民75名の書道パフォーマーにも参加していただき、皆さんのご協力で素晴らしいパフォーマンスを作り上げることができました。その他にも書道作品展やワークショップ、縁日なども行い、たくさんの方々にご来場していだだきました。書道を身近に感じるきっかけになってくれていたら嬉しいです。

——美蓮さんのパワーの源は何でしょうか?

うちの教室では、毎年生徒さんに将来の夢を書いてもらうんですけど、今年は習字の先生になりたいっていう子が13人もいたんです。年々増えていて、私も子供たちに夢を与えられているのかなって気づかされる時で、背筋がピンと伸びる思いがします。

書道教室の生徒さんは早い子で幼稚園から通って来ているので、長い間その子の成長を見守らせていただいて、その子たちが書道の先生になりたいって憧れてくれているその思いに応えたいし、みんなにとって誇れる先生でありたいと思って、頑張れています!

——リフレッシュ法は?

自分の中の切り替え法としては、旅行がすごく好きです。行くときは、決まって日帰りか1泊ですね。先週も1泊で沖縄の離島に行ってきたんですけど、綺麗な景色の中でリレッシュするという目的だけで、ほとんど観光に出歩いたりはしないんです。お互いの予定が空いたらすぐ行こう!というテンションの親友がいて、その子も自営なので、ある程度自由が利くこともあり、時々その親友と旅行しています。やっぱり行って帰ってくると、なくなったパワーがチャージされたという感じで、元気になりますね。あとは近場だと、神社や寺院を巡って、御朱印を集めたりすることも好きです。

——今後の展望がありましたら教えてください。

高校生以上で書道を学ぶとなると、都内には専門学校があったり、大東文化大学などは書道学科がありますけど、それ以外の普通のお教室で、そこまでカリキュラムをしっかり学べるところがこの近辺にはなかなかありません。私もすごく探しましたけど、やっぱりないので、都内の学校まで通っていました。この交通費や労力、時間がすごくもったいないって思って。もっと書道の深いものをしっかりと学べる仕組みをこの行田で作りたいと思っています。

——それはどんな仕組みですか?

「書写書道」というのは、お習字と呼ばれ、お手本通りに綺麗に正しく書きましょうというものです。より深く学び、表現の幅をひろげていくのが、「芸術書道」という分野です。また「アート書道」という、もう少し手軽にできる書道があって、商業書道にも繋がるような、お店のロゴやパッケージの文字を書いたりデザインできるようなものです。この「書写書道」・「芸術書道」・「アート書道」の3分野の書道を学べる学院を今後作りたいと考えています。そのための準備を進めていて、アート書道に関しては、講座を4月には開講します。

——壮大な構想ですね!

現在、彩蓮会という書道会がありますけど、その柱元となる「彩蓮学院」を作りたいんです。その学院をこの3本でやっていこうと思っています。彩アートカンパニーラボの方で、書道を身近に感じてもらう取り組みをして、書道人口が減っていると言われているので、まずは書道に興味を持ってもらい、そして、より学びたいというかたは学院で学んでもらって、書道を継承していきたいですね。

今は、私1人で教えていますけど、生徒さんの中で師範免許を取っている子もいますので、この先、彩蓮会の支部として各地で教室をやってもらえたらより広がっていくと思うし、もちろん私もサポートしていきますし、今そういう子たちを育てているイメージなんです。

——最後に美蓮さんにとっての書道の魅力とは?

書くということだけでなくて、書道を通して学ぶことは多いです。書道は深くて終わりがなく、常に学ぶことがあって、それによって心も豊かになっていくと感じています。私が書いた書を喜んでくれたりするのも、私にとってはすごく大きいのかなと思います。私が書いた字はパワーが強いと言ってくださるかたもいるので、そういう私にしか書けない書っていうのも魅力になるように今後も努力し続けていきたいです。

彩irodori書家 美蓮
●彩irodori書家 美蓮 インスタグラム
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