笑顔あふれる毎日を共に「さつきホーム」

人図鑑

さつきホーム 施設長
高橋 貴子さん

事業内容
介護付き有料老人ホーム「さつきホーム」の運営

プロフィール
行田生まれ行田育ち。大学も自宅から通い、英語科で学ぶ。大学卒業後、一般企業の総務職に就くが、勉強してきた英語を活かして自分の力を試してみたいと25歳の時、行田市に英会話教室を開業する。教室を運営しながら、2004年に兄の立ち上げた「さつきホーム」を手伝うようになる。2017年に「さつきホーム」施設長に就任。2023年に新館を増設する。

——介護業界に入られたきっかけを教えてください。

私の兄がこの施設を2004年に立ち上げて3年程経過し時に、介護保険法も変わるだろうというタイミングで、色々忙しくなってきた時に私が手伝いに入ったのが、最初のきっかけです。私はその時、別の事業もしていたのですが、ファミリービジネスの手伝いをして進めていったという感じです。

——それまではどんなお仕事を?

外国人が英会話を教えるという英会話教室を自分で開いて運営していました。英語が好きで、中高生の時に英会話教室に通わせてもらっていて、大学も専攻が英語科でした。卒業後は埼玉県内の一般企業の総務課に就職しましたが、自分が勉強してきた英語が活かせる仕事ではなかったので、もう少し自分の力をためしてみたいと思い、英会話教室を行田に開きました。行田には当時、外国人が教えてくれる英会話教室が無く、自分がやったらどうなるかと色々イメージを膨らませていたのをそのまま実現したという感じです。

——教室の運営は順調でしたか?

そうですね。外国人の先生を一人海外から呼んで、私とその講師二人でという規模でやっていたので、大きくしていなかった分順調でしたね。最初の頃は、海外に住んでいる友人に頼んで、向こうで先生の募集をしてもらいました。当時は私が就労ビザの申請ができたので、申請やその他諸々の手続きを全部自分でやりました。そのうち何年かしていくうちに、インターネットが普及してきて…。教室を開いてから閉めるまで27年間やりました。なかなか閉めるって難しいし、勇気もいりましたけど、27年間本当に自分のやりたいことをやってきて、やり残したことや悔いがないと思うくらい、やり切れたという感じでした。

——いずれは介護施設のほうをご自身がやるという思いだったのですか?

そうですね。兄の手伝いをしながら一緒にやっていて、兄は私がいるからということで、他の国のボランティア活動などしていたので、少しやり始めてから、いつかは…というような気がしていました。

——介護施設の経営者になり、苦労したことはありますか?

経営自体は小さいながらも英会話教室をやっていたので、それの大きい版という感じでした。でも、そこに今度は本当に難しい介護保険法という壁がありましたね。法律のほうは自分の努力で何とかやったというのもありますが、結局介護って医療や精神的なものもついてくる側面もあります。その部分は初心者だったので、スタッフに教えてもらいながら、今も教えてもらいながらやっている感じです。私は、さつきホームしか知らないのですが、いつもスタッフのたくましさや面倒見の良さに本当に驚かされ、感心しています。

——スタッフさんは何人いらっしゃいますか?

今は短時間のかたも含めて全部で35人くらいです。女性が多いですね。介護は生活そのものなので、やっぱり女性のほうが気づきが多いと感じます。最近分かったんですけど、例えばお着替えを出すという時に、このシャツの上にカーディガンを着るのか、カーディガンって1枚で着るのかって、男性って結構コーディネートが分からないんですよ。生活そのものの気づきに関しては女性が向くと思いますが、かといって男性がいないと成り立たないんです。力仕事をというのもありますが、男性スタッフに言ってもらったほうが穏やかに済むということもありますし。そういうバランスはとても大事だと思います。

——今もスタッフを募集していますか?

常に募集しています。世間一般に介護職が足りないと言われていますが、見ていると介護職を探している人はたくさんいるんです。マッチングができていないんですよね。そうすると今度はマッチングをする会社が出て来て、ここにコストがめちゃくちゃかかるんですよ。それで施設側が、二の足を踏んで かなり慎重になりますよね。ここをどうするかが業界の課題だと感じています。

——介護職に携わるかたの仕事のやりがいってどんなところですか?

私が入ってすぐの時でしたが、気持ちが落ちてしまっていて職員と話してくれない入居者さんがいたんです。介護って自分の身体を触られるわけだし、そこには人間関係の構築も必要ですよね。そんな時になかなか職員に心を開いてくれなかった入居者さんが初めて「ありがとう」と言ってくれたと。「これがね、介護の醍醐味なんですよ。」と、その職員が教えてくれました。入居者さんが心を開いてくれないことを憂うのではなくて、心を開いてくれたことに喜びを感じている彼女を本当にかっこいいなと思いましたね。ありがたいことに、さつきホームにはそういう職員がそろっています。

——さつきホームさんの特徴は何でしょうか?

介護付き有料老人ホームって、全国展開をしている大手の会社が9割なんですよ。私のところは私が代表で、1法人で1施設しか運営していません。だからこそ、色々なものに融通を利かせた施設でありたいと思っています。また個々の対応にはなりますが、緊急性があればすぐに入居ができるようにしています。

全体的にはやっぱり集団生活なので、楽しみをできる限りたくさん提供したいなと。その中で、「食」の楽しみはとにかく大事だと思うんです。お口から食べるというのが生きることに直結していると、この業界に入って本当に実感しました。なので、さつきホームの厨房は委託ではなく自社運営なんです。私も行田生まれなので、地元の商店街の魚屋さん、お肉屋さん、お米屋さんから仕入れて、それをここで手作りで調理して提供しています。入居者皆さん本当に美味しいと言ってくださっていて、私たち職員も同じものを食べるので、食事を楽しみにしていますよ。

——施設内に農園があるそうですか?

これは先代の私の兄が一番最初に施設をスタートしたときに作りました。農園に限らず、自然のものって絶対大事なんですよ。1日のうちの少しの時間だけでも、実りのある作物を育てていく過程が見られるのは、入居者さんも喜びに感じているのを見ているので、これは続けていこうと。もちろん食材100%を農園では補えませんが、スイカが生ったらそれがオヤツになったり、収穫したものをお見せできるので、生き生きとした何か違うエネルギーを提供できるような気がしています。

——四季折々のイベントも豊富に開催されているようですね!

今年の夏は、私の大好きな沖縄をピックアップして、沖縄フェアと勝手に名付けて色々音楽・飾りもの・オヤツ等を沖縄に特化した3カ月間を過ごしました。秋はハロウィン、冬はクリスマスと季節のお料理でも色々やらせてもらっています。その他、音楽のイベントがどうしても多くなってしまうのですが、音楽は全く知らない音楽よりも、今まで生活の中で聴いてきた音楽の方が入居者皆さんに喜ばれるようです。でも、本当にありがたいことに、皆さん何でも楽しんでくださっていますよ。

——入居者さんとの関わりかたで心がけていることはありますか?

私、介護自体はできないのでスタッフさん頼りですが、入居者さんとできる限り会話の機会を持つようにしています。ここでの生活に我慢してもらいたくないんですよね。我慢してもらわなきゃいけないところもあるかもしれないですけど、我慢してないか、辛くないかっていうところの声をちゃんと拾えるようでありたいなと思っています。

——入居者さんのご家族とも接する機会はありますか?

ありますね。離れている分、ここでの生活の色んなことをお伝えしたいなと。それを新聞やメールでお伝えしたり、生活相談員に伝えてもらったりしてます。

——2023年に新しい棟を建てたそうですが?

これを建てる前は32床で運営していて、ほぼ満床だったんですよね。入居希望があってもお断りしなければならない状況が続いていて、ものすごく忍びないなと。私が施設長に就いた時に目標としたのは、この引き継いだ32床をピカピカに維持することでした。そんな中、2019年に週刊ダイヤモンドという雑誌で埼玉県の有料老人ホームランキングがあって、さつきホームが埼玉県で1位だったんです!すごく嬉しかったのと、目標がある意味達成できたかなという気がしました。ものすごくいい職員がついてくれて、満床続きで、1位がついて…。これはもうピカピカになったってことなのかなって思った時に、次の目標として増床をやらなくちゃいけないんじゃないかと。

で、隣に空き家になっている地続きの土地があったんです。元々瓦工場だった築100年の建物があって。そこをなんとかしなければという思いになりました。土地をお譲りいただき、建物を取り壊すとき、昔ながらの立派な瓦がたくさん残っていたので、貴重なものを保管して、お稲荷さんのところに飾らせていただいています。中には瓦図鑑の表紙になっているものと同じような図柄の瓦もあるんですよ。

——設計に「ものつくり大学」も関わっておられるとお聞きしましたが?

せっかく私も行田出身で、行田に施設を増設するということで、行田ものつくり大学設計科の教材のひとつにしてもらえたらと思い、ご提案させていただきました。高齢者福祉施設の設計は一般住宅よりも数もすごく少ないでしょうし、学生さんたちの良い経験になったら良いなと。

——高橋さんが新棟にイメージされたことはありますか?

施設を利用されている方はなかなか外に出ていけない方々ばかりなんですよね。その方々が外に行かなくても街並みを感じられるような雰囲気の、長くて幅の広い廊下をイメージしました。一部2階がついていて、この部分には外壁の壁材を室内に使い、立体感を感じてもらいたいと思いました。効果の立証はできませんが、認知症予防にもなるかと、あえて凹凸もつけました。何もないただ真っ白な平らな壁にならないように、色々作らせてもらいましたね。

——2階をつくるという事にも思いがあったのですよね?

入居者さんの生活スペースに使わない、2階を作るというのはとても贅沢なことだったんです。でも、この土地は利根川も近いし、近年の台風や他の災害も本当に脅威なんですよね。私たちは命を守らなきゃいけないんですけど、この自然災害に対して例えば水害に関してとなると、施設に求められるのは垂直避難しかないんです。できる限り上にとなった時に、やはり2階スペースに避難ができるというのは、生活に安心感が生まれるんじゃないかと思いました。それは、入居者さんだけでなく、働いてくれているスタッフさんも同じで、そいうものがきちんと考慮されている施設であれば、安心して働けるんじゃないかと。そんな思いで2階を作りました。

——2階には備蓄庫もあるそうですね?

災害時に、食料品などの入っている備蓄庫が建物の外や離れたところにあったら、意味をなさないと思ったんです。外に出なくても備蓄庫まで辿り着けて、食料の提供ができるところに備蓄しないといけないと思って、備蓄庫もしっかり作りました。

——外のエアコン室外機にもエピソードが?

そうなんです!エアコンの室外機カバーに関しては、ものつくり大学の大学院生の女性が卒業製作の一つとしてこれを作ってくれたんです。この室外機カバーの製作を私は最初、学校の夏休みの宿題工作のような感覚で捉えていました。ところがですね、室外機をここに置いた時の風向き・風の強さ・天候の傾向など全部調べてデータ化して、夏と冬のエアコンの熱効率を最大限にするものという研究をした結果、この形になりましたという室外機カバーを作ってくれたんです。それで、実際に検証もして、何%の電気代が削減できて、電気量もこれでしたというデータを私に報告してくれて、これを卒業制作として置いていきますと言ってくださって。もう本当に感激しました。

——素晴らしいですね!!ところで、高橋さん休日はどのように過ごされていますか

私はもっぱらインドア派です。休日の趣味として、最近は仏像彫刻にハマっています。極めたいですね!

——最後に、今後の展望がありましたら教えてください。

今までと同じように、やりたいことをやっていきたいし、やりたいことがやれるような施設でいたいなっていうのがあります。これからも、さつきホーム一点集中でピカピカに磨き上げていきたいです。

さつきホーム

埼玉県行田市 荒木2131-3
048-550-7633
https://satsukihome.jp/

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