
忍乃珈琲
オーナー 薄島 春希(うすじま はるき)さん
事業内容
移動式コーヒー店の運営
プロフィール
年齢、23歳。行田で生まれ育ち、市内の小中学校を経て羽生第一高校を卒業。春日部市内の大学に進学し、教育学部を専攻した。幼少期からものづくりや人と関わることが好きで、「屋台のかき氷屋さん」を夢見ていたという。高校時代には地元の飲食店でアルバイトを経験し、「直火焙煎珈琲 まめや忍」での出会いをきっかけにコーヒーに魅了される。2024年、大学4年の在学中に移動販売をスタート。移動販売用の自転車を購入して自ら補強・改造を施し、「忍乃珈琲」を運営。街中を駆けながらハンドドリップで丁寧にコーヒーを提供している。誠実さと行動力を武器に、夢を追いながら挑戦を続ける若き起業家。

——最近まで大学生だったそうですね?
はい。今年の3月に卒業しました。卒業後はアルバイトをしながら、このお店でのコーヒー移動販売をメインに活動しています。
——どんな子ども時代でしたか?
ものづくりが好きでした。幼稚園の頃、将来の夢を聞かれるとずっと「屋台のかき氷屋さん」と答えていました。人と関わったり、何かを作ったりするのが好きだったんだと思います。
小学生の頃は、外でサッカーやドッジボールをして遊ぶことが多かったです。古いものが好きで、古銭などの収集にもハマっていました。
——高校時代のアルバイトの思い出や、コーヒーに目覚めたきっかけを教えてください。
高校に入学して数週間後の5月、父親のつながりで行田市役所の近くにある香港飯店さんで働き始めました。合格報告に行ったら「じゃあ来週の土曜からバイトしなよ」と言われて(笑)。そのまま8年間働きました。

コーヒーに目覚めたきっかけは、香港飯店の常連であり元バイトの先輩が「近くにすごく美味しいコーヒー屋さんがある」と話していたのを聞いたことです。コーヒーが飲めなかったのにも関わらず、興味本位で訪れた「直火焙煎珈琲 まめや忍」さんの豆の香りに衝撃を受けました。そこから通うようになり、高校2〜3年生頃からなので、もう7年くらいのお付き合いです。

——高校生でコーヒーにハマるのは珍しかったのでは?
制服のまま帰りにまめやさんへ寄って、コーヒーを飲んでから帰る…そんな高校生でした(笑)。空間も良く、マスターも気さくに話しかけてくれるので通いやすかったです。
最初はミルクも砂糖も入れていたのですが、コーヒーが好きになってからはブラックで飲むようになりました。
——なぜ自転車で移動販売を始めようと思ったのですか?
大学1年の時にコロナ禍で授業がすべてオンラインになり、時間がたくさんできました。「このまま4年間何もしないのは嫌だ」と思い、最初はオンラインショップを開こうと考えました。
でも、どうせやるなら直接お話ししながら販売したいと思い始め、キッチンカーを調べたら学生には高額で…。SNSで自転車販売をしている方を見て、「これならできる!」と思ってからはずっと調べていました。
結局、オーダーメイドアプリで自転車を購入。貯めたアルバイト代で、誰にも相談せずに買いました。
——購入費用はどれくらいでしたか?
20万円ほどです。電動は26万円でしたが、節約のため手動を選びました。でも注文先のトラブルで、値段は手動のまま電動が届きました。結果的に電動で本当に良かったです(笑)。
——ご自身で改造やデザインも?
かなり手を加えました。届いた状態だと補強が弱くて雨ですぐ傷みそうだったので、父親にも手伝ってもらいながら改造しました。保健所の許可を取るために、消毒・支払いスペース・手洗い設備なども追加しています。

——移動販売を始めることについてご家族の反応は?
母親には「毎回後先考えずに…」と言われました(笑)。自転車置き場のことも考えずに買ったので…。でも買った以上、もう引き返せないと分かっていました。
父親は「好きなことをやった方がいい。若いうちの方がリスクが少ない」と応援してくれました。
——接客で心がけていることは?
行田市にはコーヒー屋さんが増えていますが、1杯500円は安くありません。その中でも来てくださることが本当にありがたいので、誠意を持って接客するようにしています。市役所での出店では「ここが毎日の楽しみ」と言ってくださる方もいて、励みになっています。

——1杯のドリップに込める思いは?
提供するコーヒーは、「まめや忍」さんの直火焙煎豆を使ったハンドドリップコーヒーです。500円を払ってくださる以上、失敗は許されないと思っています。注ぎ方や温度で味が変わりますし、失敗したと感じたらすぐ分かるんです。そういう時は妥協せず、捨ててやり直します。お客さんの好みに合わせて味を調整することも心がけています。

——市役所前での定期出店を通して感じた手応えは?
許可をいただいている商工観光課の方々には本当に感謝しています。短い時間でも毎回買ってくださる常連の方もいて、そういう方を裏切りたくないという思いは強いですね。
——接客については香港飯店さんで学んだところが多いですか?
はい。お客さんと話すのが好きで、酔った方とも普通に話せます。話したら面白いだろうなと思って、つい話しかけちゃいます。
——行田らしさとして大切にしたいことは?
行田は“消滅都市”とも言われますが、だからこそ地域のつながりの濃さや温かさを強く感じます。
——行田には良いお客さんが多いという声もあります。
本当に良い方ばかりです。親にも「周りの人に恵まれているから感謝したほうがいい」と言われますが、その通りだと思います。
——ここまでの道のりを振り返ると?
自分でも「すごい道に進んでいるな」と思いますね(笑)。
——挫折しそうになったことは?
ないですね。負荷があるとすれば費用面くらいです。キッチンカーは費用が大きく失敗する方もいますが、自転車は初期費用を抑えられたので借金なしで始められたのが良かったです。
——現在も他の飲食店で修業されているそうで?
香港飯店さんには今も木曜日に入っています。まめやさんにもバイトでお世話になり3年目です。
——「まめや 忍」さんで働くことになった経緯は?
一度お願いした時は枠がなくて断られましたが、前のバイトの方が大学院へ進学するタイミングと僕の大学入学が重なり、「1・2年生で単位を落とさなければ3年生からOK」と言われました。マスターは優しいけれど、仕事に関して、特にドリップはとても厳しかったです。メリハリがはっきりとしていました。

——失敗したら捨てるというこだわりはそこから?
そうです。失敗した一杯は絶対にお出しできません。まめや忍のマスターに徹底して教わった姿勢が、今の僕の基準になっています。

——「ビストロフジヤマ」さんでも働いているとか?
はい。ビストロフジヤマのオーナー、鈴木さんと市内のサウナで出会ったのがきっかけです。固定では入っていませんが、連絡があれば手伝っています。フレンチはまた違うので勉強になります。
——何かを始めたい同世代へメッセージを。
今まで関わってきた先輩方や香港飯店のマスターから「100%で始めようとしちゃダメ」とよく言われました。完璧を求めると一歩が踏み出せない。70%くらいできたら始めちゃえばいいと思います。実際、僕の自転車のパラソルやスライドテーブルも、お客さんの声を聞きながら整えていきました。
——夢を叶えたい原動力は?
やりたくないことは全くやらない代わりに、興味のあることには全力です。母には安定した職を勧められましたが、どうせ働くなら好きなことをやりたい。もしダメならその時に安定を選べばいいと思っています。迷ったら「後悔しない方を選べ」とマスターに言われてきました。
——今後の夢や目標は?
やりたいことが多すぎて…(笑)。でも、まずはキッチンカーをやりたいです。今のスタイルは時間が限られてしまうので、夜の時間にできることを増やしたいと思っています。クラウドファンディングができれば、大きいキッチンカーを買いたいですね。
店舗はまだ先ですが、小さなコーヒースタンドも面白そうですし、おでん屋台や立ち飲みの雰囲気も好きなので、いつかは挑戦してみたいです!


忍乃珈琲(自転車移動販売)
出店場所:行田市役所前
出店日 :原則 月曜日・金曜日
出店時間:11:00〜14:00
※その他、行田近隣のイベント等にも出店しています。
詳細はInstagramをご確認ください。
Instagram:https://www.instagram.com/oshi_no_coffee

