手描きアートでつむぐ、心の彩「大藤 友美子さん」

人図鑑

ペイントインストラクター  
大藤 友美子 さん

事業内容

手描き看板アートの受注制作
看板講座・アート資格講座等、アートイベントの主催
グラフィックデザイン(JOYKS DESIGN 事務所)

プロフィール

大阪で5人兄弟の長女として生まれ、東京都三鷹市で育つ。小学4年生のときに埼玉県へ。幼い頃から絵や工作が大好きで、家じゅうに絵を描いたり段ボールで作品をつくったりして過ごす。学校では陸上部に所属し、短距離走に打ち込む。高校は美術科に進学。卒業後は子供服や犬服のデザイン会社、さらにカシオ計算機でグラフィックデザインに携わる。結婚を機に、ご主人の地元である行田へ。自宅でフリーランスのデザイン事務所を開く。コロナ禍をきっかけに「手描き看板アート」を始め、現在では市内外の店舗の看板を手掛けるほか、アートイベントなどを通してアートの楽しさを広める活動にも力を注いでいる。

——犬・子供服のメーカーではどんなお仕事を?

服の柄やプリントデザインを担当していました。花柄や刺繍デザインなどを描いて、中国の取引先工場とやりとりしながらサンプルを仕上げてもらっていました。

——中国語を使っていたんですか?

はい。高校で中国語を選択していたんです。まさかここで役立つとは思いませんでしたけど(笑)。AIの翻訳機能もない時代だったので、辞書を引きながら必死に対応しました。中国や香港にも出張させてもらい、製品ができる工程を目の当たりにできたのは貴重な経験でしたね。

社長がとても良い方で、デザインソフトの使い方から製品づくりの流れまで丁寧に教えてくださって。この会社で一から基礎を学べたことが、カシオ計算機での仕事や今にも繋がっています。

——手書き看板を始めたきっかけは?

結婚して行田市に移り住んでからは、フリーランスとしてグラフィックデザインの仕事をしていました。その中で飲食店さんと関わる機会が増えてきた頃、ちょうどコロナ禍になり、大きな打撃を受ける姿を見て「自分にできることはないか」と考えるようになったんです。そんな時に、テレビでチョークアートという看板に絵を描く仕事を知り、ビビっときたんですよ!「これを学んで飲食店を応援したい」と思い、神奈川まで資格を取りに行くことを決めました。

——行ってみてどうでしたか?

初めて通った日の帰り道、気づいたら涙が止まらなくて、電車の中でワンワン泣いてしまったんです。高校時代に絵で挫折して、「もう絵はやめよう」と封印していた思いが一気によみがえってきて…。でも実際に描いてみたら、「やっぱり私、これがやりたかったんだ!」「絵が好きなんだ!」と鳥肌が立つほどの感覚があって、心が解き放たれるようでした。

神奈川まで通うのは決して楽ではありませんでしたが、大人になってから改めて学ぶ時間はとても新鮮で楽しくて。2年ほどかけて、最終的にはインストラクターの資格まで取得することができました。

——学んだことをどんなふうに形にしていったのですか?

やっぱり、人に喜んでほしいと思ったんです。最初は「無料で置かせてください」と看板を担いで飲食店に飛び込みましたが、置いた看板が好評で「買い取りたい」と言ってもらえて。材料費だけいただいて次の店へ…と続けていたら、最終的に全てのお店が購入してくれたんです。あれは本当に奇跡のようでしたね。

——今では多くの依頼を受けていますね!

Instagramに記録として作品を載せ始めたら問い合わせをいただけるようになり、受注制作へとつながっていきました。依頼の際は「ただの看板」ではなく「お店を支えるツール」にしたいと思っています。店主さんの想いや課題を丁寧に聞き取り、チラシのように必要な情報を看板に落とし込む。看板を見たお客様が実際に注文してくれたと聞くと、本当に嬉しいです。

——依頼を受けてから、納品までの流れってどんな感じなのですか?

まずは打ち合わせをして、お店の雰囲気やご希望を伺います。その後、いくつかレイアウト案を提案し、そこから下描きを詰めていきます。ひとつの依頼でも、完成までに大体1ヶ月ほどかかるんです。オーダーメイドだからこそ「そのお店だけの特別な看板をつくりたい」という思いで取り組んでいます。

それから、私は食べることが大好きなので、行ける範囲のお店なら実際に食べに行くようにしています。やっぱり自分で「美味しい!」と思って描くと、表現に感情が乗って、仕上がりの温かみがまったく違うんですよね。

——印象に残っている作品はありますか?

みんなそれぞれ思い出があるんですけど、3メートル幅の大きな看板を描いた「Sunrise CAFE」さんですね。今までで一番大きいサイズだったので、バランスが難しかったですが、完成して取り付けられた姿を見た時は感動しました。

——今年は、個展も開催されたそうですね!

はい、産業文化会館のギャラリーで個展を開かせていただきました。実はそれまで、自分がこういう仕事をしていることを周囲にあまり知らせていなかったのですが、この機会を通してたくさんの方に知っていただけて、本当にありがたかったです。

個展のタイトルは「おなかがすくアート展」。身近に感じてもらえて興味を持っていただけるようにと、グラフィックデザイナーでもある主人と一緒にネーミングにこだわりました。最初に「個展をやってみませんか」と声をかけてもらったときには、まさか自分の絵を観に人が集まってくださるなんて想像もしていなかったのですが、予想以上に多くの方に足を運んでいただけて驚きましたし、とても嬉しかったです。

展示では手描き看板のほか、制作過程で描いたラフ画や、高校時代のデッサンなども紹介しました。また、会期中にはワークショップも開催し、お子さんやご家族にアートの楽しさを体験していただけたことも、とても印象に残っています。

——普段の生活やリフレッシュ方法は?

3人の子どもがいるので、基本的には子ども優先。制作は自宅でしているので、子どもの帰宅時間には作業を片づけるようにしています。

リフレッシュ方法は、毎日のウォーキングです。行田には自然が多くて、古代蓮の里やさきたま古墳群、水城公園などをよく歩きますね。朝に1時間ほど歩いてから仕事に取りかかるのが日課です。自然の中を歩いていると、気持ちが前向きになって、考えも整理されるんです。新しいアイデアが浮かぶこともあって、私にとってウォーキングは欠かせない大切な時間になっています。

——これから、どんな活動を考えていますか?

やっぱり根本にあるのは「人に喜んでもらいたい」という気持ちなんですよね。だから今後は、その思いを伝えたり、教えたりできる場を広げていきたいなと思っていて。それがワークショップやアートイベントなんです。

アートって正解がなくて、とても自由なもの。それぞれの個性がそのまま生きるものなんです。だから「間違いなんてないんだよ」ということを伝えたい。人生だって同じで、たとえ挫折があっても、それは一つの味になっていくと思うんです。絵を描くことを通じて「人生に間違いはないんだ」というメッセージを届けたくて。

それから、学校や社会にうまくなじめずに悩んでいる子の心も、アートを通して少しでもほぐせたらいいなと思っています。途中の過程だってきれいだし、「自分はこれでいい」って思えたら、それで十分。そういう自由さは、絵にも人生にも通じていると思うんです。

あともうひとつは「看板講座」。女性がもっと輝けるように、絵が好きだけど仕事にできるか不安な人に、これまでのノウハウを全部伝えて、開業できるところまで応援したいと思っています。飲食店さん向けに「自分のお店の看板を自分で描けるようになる講座」も始めました。

——最後に、これから先の夢やチャレンジについて教えてください!

さらに、新しい挑戦として「カウンセリング要素を取り入れたアートイベント」にもトライしたいんです。私自身も悩みながら生きてきたけれど、アートを通して「これでいいんだ」「好きなことを仕事にしていいんだ」「欠点もその人らしさだ」って思えるようになったので、その体験をほかの人にも味わってもらえたら嬉しいなと思って。

具体的には「カラーブレスセラピー」という名前をつけました。ヨガみたいな呼吸法を取り入れて「今日のあなたの色は何ですか?」って聞いてみる。無意識に選んだ色には意味があって、自分の深い気持ちに気づけるきっかけになるんです。1対1で向き合う、セラピーのような教室にしていきたいと思っています。

「デザイナー」にとどまらず、人の心を元気にしたり、前に進む力を届けられるような活動にチャレンジしていきたいです。

大藤 友美子

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